船のカタチ (8)   QM1とQM2 - 新旧 QUEEN MARY に見る船舶技術の進化   2010-08 神田 修治

 今回は前回を受けてQM1とQM2の内部、技術的なことを見ます。
 QM1 から QM2 の67年間に、もちろん船舶技術には大きな進歩がありました。

 上図中 赤色は推進機関関係の区画を示します。 QM1 はボイラーと蒸気タービンで4軸、QM2 はデイゼルと
 ガスタービン、4基のポッド推進器の電気推進で、どちらも合計約16万馬力です。
 図を見てQM1では機関が船体の主要部を大きく占領しているのに対し、QM2 では著しく小さいことが判ります。
 特にガスタービンは2.5万馬力のものが2基、煙突の直下という高い位置に設置されているが、これはガスタービンが
 軽いから可能になったといえます。 いまのガスタービンはジャンボ機等のジェットエンジンをもとに開発された小型・
 軽量・高出力の機関です。
 この図は QM1 から QM2 への、推進機関の小型・軽量・高出力化等の技術進歩を如実に示しています。

 上図の緑ハッチングは船体主構造を示し、その上縁の緑の太線は強力甲板です。 QM1ではプロムナードデッキ.が
 強力甲板で、それより上部の構造は軽構造で縦強度部材とは考えず伸縮継手(Exp.Jt.)が設けられているが、QM2
 では最上層甲板を強力甲板とし、伸縮継手はない。
 縦強度からは断面係数が大きくなる QM2 のほうが有利だが、QM1 ではスピードや復原性の関係からそれが出来な
 かったのだと思います。 即ち QM1 では高速のために船幅を小にし (L/B=8.2)、それで復原性を確保するために、
 上部を軽くする必要があったが、QM2 では幅が大でもいける船型の発達 (L/B=7.7)や、鋼材の進歩による軽量化が
 あったと思います。
 伸縮継手の問題については、K-シニア会員の間野正己先生が、オランダ客船、新旧の ROTTERDAM についての
 論文を紹介されていますが、その中に強力甲板について上記と同様のことが記されています
(1)。 というより (1)
 おかげで、私が上記のことを思いついたのです。 また QM2 では Dk7 より上部に4列の縦隔壁を設けているそうだ
 が
(2)、これはサギングでの強力甲板の座屈の防止を考慮したものと考えます。 (図中Long.BHD)

 船舶技術の進歩にはまだ他に多くのことがあるが、ここには推進機関と船体構造の進歩について記しました。


       文献  (1) Stapel他著、間野訳、SS ROTTERDAM号の伸縮継手の疲労強度 船の科学 1999-08
            (2) Genesis of a Queen-QUEEN MARY 2、RINA 2004 p 27   


                                                                (次回につづく)

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