船のカタチ (10)   MOOLTAN と AQUITQNIA - P&O と Cunard のカタチの特徴   2010-10 神田 修治


  先日、船のカタチ(1)を見た知人から STRATHMORE の船尾はピンと上がっているね、といわれました。
  その人は船の専門ではないがウマク言い当てていると私は思いました。 たしかにS船は船室が船尾までイッパイ
 にあり、さらにシヤーがあるため船尾がピンと上がっている感じがします。 それに比べ MAURETANIA はハウスの
 後部はなだらかな階段状となっています。 このことはP&O社船、Cunard社船のカタチの特徴であり、その後の両社
 の船のカタチの系譜となって踏襲されていることは、これまでのシリーズで見てきたとおりです。

  そこで今回は両社の船の歴史を遡って調べてみました。 上図は P&O 社の MOOLTAN級 と Cunard 社の
 AQUITQNIA です。 これらは1910〜20年代、鋼製汽船が出現した初期の船ですが、この頃からすでにMO船の船尾
 イッパイに船室を置くという P&O社の特徴と、AQ船のハウスの後部はなだらかな階段状、という Cunard社の特徴が
 見られます。 そして両社船のカタチの特徴は1960年代まで受け継がれ(船のカタチ(3)船のカタチ(6)参照)、
 さらに 2000年代の QM2までもが無理をしてハウスの後部を階段状に見せています。(船のカタチ(7)参照)

  Cunard社の船は高速前進する巨大構造物として、シルエットの質量感を流線形というか、中央部に大きく前後は
 小さく、それも後部はなだらかにしている。(下図A)  一方P&Oの船は船室を多く取るために船尾イッパイまで船室を
 配置するという考えだが、私はその典型として香港のフェリーを想い出します。(下図B)  このことは船のカタチ(1)
 で記した、両社関係者のセンスの違いの一つだと思います。
  そしてこのことは、船のカタチを考える上で重要なことだと思います。



                                                                (次回につづく)

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