船のカタチ(38)  ノルウエイ式捕鯨
              KOSMOS  日新丸<1937>  日新丸<1951>  THORSHAVET(THV船)

                                                                   2013-02 神田 修治


前回(船のカタチ-37)につづき捕鯨船・鯨工船について記します。

私にとって捕鯨は懐かしい。鯨肉ステーキはご馳走だったし、日新丸<1951>を見学したこともあり、中学校の図書館で檀一雄の「南氷洋に鯨を追う」というルポルタージュ(ref.1)を読みました。 当時捕鯨は日本復興の牽引役、人々から重要な産業と認められていました。 そこでここには日本の船も含めてノルウエイ式捕鯨の捕鯨船、鯨工船を図示します。 KOSMOSは鯨工船として新造された(purpose built)世界最初の船です。 日新丸<1937>はFurness造船所の図面をもとに川崎で建造され、漁期に間に合うよう短期間で建造され話題となりました。 日新丸<1951>は川崎で設計・建造され、「戦後最大船」として注目されました。 この船の前部ハウスは大きく立派です。「戦後最大船」や「日本復興の牽引役」という関係者の気負いがこのハウスのカタチに現れたのかとも私は思う。 THORSHAVETは船のカタチ-37にも出たが、ここには右舷前方から見た絵を示します。

これらの船を並べて見ると、鯨工船、捕鯨船それぞれに、よく似たカタチConfigurationです。 このことをDominant Designといいます(ref.2)。 ref.2の BL.BasbergによればDominant Design(DD)とはある製品等においてマーケットの要求やメーカーの経験等の蓄積により共通的・普遍的になった設計のことで、製品等の発達、イノベーションのマイルストンとしてある期間継続した不変な設計であり、自動車等にもみられるが、鯨工船はその典型であると述べています。 そう考えると他にもDDの例は、タンカーやバルクキャリアー、自動車船PCCやコンテナ船、各種のLNG船等いろいろあります。 私たち造船屋にとってDDの考えは大切で、この範囲の中で船を遺漏なく設計することも大切だし、新しいDDを創りあげることもまた重要と思います。

ノルウエイの人たちは、鯨工船、捕鯨船のDDを創りあげた、といえると私は思います。 そして鯨工船、捕鯨船のことを調べて私は、ノルウエイの人たちは、遠く海に出てゆきそこで長期間腰を据えてオペレーションして働く、というやり方であるな、と感心しました。 私たち日本人の海への視線・姿勢はどうでしょうか。

 (ref.1) 檀一雄、 南氷洋に鯨を追う、 文芸春秋1952-06 (私が読んだのは挿絵のある児童向け単行本)
 (ref.2) BL.Basberg、 The Floating Factory : Dominant Design and Technical Development of Twentieth-Century
                             Whaling Factory Ships、 The Northern Mariner、v3、n1(1998)



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