船のカタチ(43)  ノルウエイの船  BERGEN LINE
               JUPITER (J船)、 VEGA (V船)、 LEDA (L船)、 JUPITER/BLACK WATCH (JB船)

                                                                   2013-07 神田 修治


Bergen Lineは1851年創業のノルウエイ名門船社、ベルゲンを中心に英国ニューカスル等を結ぶ航路をやったりHurtigruten(船のカタチ-40)に加わったりしましたが1970年代に姿を消しました。 ここには盛んであった頃の船を示しますが、みなカタチ良い船で、船名には星の名をつけています。

J船は懐かしいカタチ、V船はオーシャンライナー (例えばQE1 船のカタチ-5) の縮小版といったカタチです。
L船は開口少ないハウスと大きな円錐台形(トルコ帽型)のエントツがマッチしたよいカタチだと思います。 これらの船は黒い船体に、黒に白線3本のエントツだが、黒色が気品を醸して、よいカタチの要因になっていると思います。
L船が売船されたあと白一色に塗られた写真を見たことがあるが、それは間の抜けたものでありました。 L船では、Bergen Lineの黒い彩色を意識しながら船のカタチを設計したのではないかと、私は思います。 またV船とL船はハウス前端に1層の甲板室を設けているが、これもよい造形になっていると思います。

JB船はFred Olsen社(船のカタチ-42)と共有のカー・パッセンジャーフェリー(CAR-PAX)で、夏場はBergen社が運航しJUPITERという船名で北海を走り、冬場は船名まで変えて、Fred Olsen社のBLACKWATCHという船名でカナリア諸島の航路を走るというユニークな運航をしました。 そして彩色はFO社の標準だがエントツはFO社のファンネルマークに加えてBergen社の3本白線をつけています。 このころ北欧ではモータリゼーションが盛んとなりCAR-PAXが多数建造されたが、カーフェリーの機能と客船のカタチの調和に苦心・工夫の跡が見られます。
JB船はエントツのカタチも独特で「消防夫のヘルメットFirefighters Helmet」と表現したのを見たことがあります。 下半分が広がっているのは消防夫の首筋を保護する覆いのようで、ナカナカうまい表現だと思います。

「トルコ帽」とか「消防夫のヘルメット」とかいうのは、思いつきが面白く、船好きの人たちの、船への親愛感が感じられます。 そういえば、新幹線の最近の先頭のカタチを「カモノハシ型」というそうです。

これまで船のカタチについて調べてきて思うことは、これらのカタチは当然ながらその時代の造船技術、工作技術に関係する、というか制約を受けるということです。

J船は1920年竣工、この時代は鋼製動力船、スクリュー推進の実用化が進み、船のカタチも機関を船体中央に置きその上部にハウスを置くという中央機関・中央ハウスのカタチが定着したといえます。 エントツは煙を導き排出するためのパイプとして円筒型、ハウスは直線的・平面的です。 しかし主船体は伝統的な流線形で、シヤーもキャンバーも、タンブルホームもあります。 そしていわゆる直立船首と楕円ナックル船尾です。 このような主船体の曲面は曲率がゆるやかで工作技術も確立していました。 当時は鋼条材を鍛冶工場で曲げたフレームを一本ずつ船台上に建て並べ、それに鋼の外板をリベット接合する「フレーム建立建造法」でありました。

V船の1930年代は流線形のはやった時代といえます。 V船をはじめ、Ocean Liner (船のカタチ-1等) も流線形です。 さらにCargo Liner (船のカタチ-13の神川丸) にも、Hurtigruten (船のカタチ-40のPR船) にも流線形が見られます。 これらの流線形には節度があり良いカタチと私は思います。 L船は戦後1950年代、流線形を卒業して造形美を探ろうという意思が感じられる。 V船とL船の主船体はいわゆる傾斜船首、クルーザー船尾です。

これらの船の造形の中、V船とL船ではハウス前部やエントツに、造形と工作の工夫が見られます。



上図の(A)は一次曲げ(母線が直線)で形成し、各層を階段状に積み前後方向に変化を持たせて流線形らしくしています。  エントツも(B)のように一次曲げの筒型ですが底部を斜めに切ってエントツを傾斜させています。 このようにしてV船は高速前進感 (船のカタチ-11a) のある流麗なカタチになりました。 さらに工夫して一次曲げではあるが円錐台形にしたものが(C) L船のエントツで、トルコ帽型とも言われています。 (D) L船ハウス前部は二次曲げ(左右にも上下にも曲がっている)としています。 L船も美しい造形だと思います。

現今の造船では、大きな骨部材は鋼板から切出したものを溶接組立して作り、鋼板の曲げには線状加熱等が多用されて球状船首等の複雑な二次曲げも自由自在に作られ、さらには「ブロック建造法」に変わっていることは周知のとおりです。 自由自在に工作できるからといって、最近の船のカタチがよくなっているか、には問題があると私は思います。 工作法や機能・性能からくる制約の中で、それらを生かしながらよいカタチを創りあげること、そして出来上がった船を見る人たちから好感・好評を得ることは大切だが、難しいことだと思います。

このことを、OSKで設計をやられた和辻春樹氏は「近代科学と船の性能を理解した船の新しい美」(1)といい、KHIで設計をやられたあとK-LINEに転じられた高橋菊夫氏は「独自の風格」(2)といわれています。
概念としては理解できるが、それでは具体的にどうすればよいか、私は釈然とせず、やはりこのことは難しい。 このことを考えるのが、この「船のカタチ」シリーズの狙いのひとつであります。

        (1) 和辻春樹、 船と科学技術、 天然社 1942、pp75
        (2) 高橋菊夫、 思い出の船を追って、 Kラインニュース 1966


船のカタチ(42)へ      ギャラリーのトップに戻る      船のカタチ(44)へ