船のカタチ(55)  米海軍潜水艦の耐圧船殻のカタチ
                                                                   2014-07 神田 修治


前回はSig.Ship13の話題でしたが、今回から潜水艦にもどり、話を続けます。

潜水艦の船体は、潜水による水圧に耐える耐圧船殻と、非耐圧船殻からなります。
これらのカタチは外観からは判らず構造図や艦内配置図によることとなるが、米海軍はこの情報をかなりオープンにしています[1]。 上図はこれまで、船のカタチ-51-52-53に示した米潜について耐圧船殻、非耐圧船殻を示したものです。 図中明るいグレーは耐圧船殻であり、内部はほぼ大気圧で人間が普通に活動できます。 暗いグレーは非耐圧船殻で、ここは主にバラストタンク(BT)となりこの中に海水を満たしたり排水したりして、潜水艦は潜航または浮上をするのです。 非耐圧船殻内は潜航中外界(海)と同圧力です。 耐圧船殻は外圧による座屈圧壊に対する強度が重要で、このためにカタチは円筒や円錐の回転体に補強フレームを溶接したもので、部分的に球や回転楕円体等の殻となっている。 また耐圧横隔壁によって補強と区画分けがなされています。

上図から言えることは、1950-60年代には非耐圧船殻、ひいてはBTの容積割合が大で、これにより浮上時のフリーボードが大きく水上航行に有利だが、最近の艦ではBTの容積割合が少となっています。 これは潜水艦の運用が水中主体となり浮上時のフリーボードの重要性が低くなったためで、潜水艦が以前の「潜水できる艦」から「真の潜水艦・水中艦」に発達したことのあらわれといえます。 また耐圧横隔壁の数が最近では少なくなったのも、水上重視では、ある区画に浸水しても浮かぶことが重要と考えたが、水中艦ではその考え方が変わったためと思われます。 原子炉区画(図中R)は船体中央 の近くに配置しているが、これは原子炉重量が大であることに加え、原子炉安全のため、運動中できるだけ動揺加速度の小なる場所に配置したのだと思います。

米潜では数多くの原子力プラントが実用されているが、これまで原子炉が原因の大事故は起こしていません。 これは当然あるべきこととはいえ、安全上まことに立派なことと思います。

   [1] 例えば、N. Friedman, US Submarines since 1945, US Naval Inst. 1994


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