船のカタチ(77)  海上保安庁 測量船
              拓洋 <1983>、 天洋 <1986>、 明洋 <1990> 級、 昭洋 <1998>、
              はましお <1991> 級
                                                                   2016-05 神田 修治
   ref.  特記の他 海上保安庁ハンドブック 海人社2001
   図中一つの船につき左右二図あるが、左側は正横側面図、右側は船首45度右舷から見た図を示す。


日本で海図の担当は海上保安庁(海保)です。 海図は航海のために必要な、水路の状況、水深、底質、海岸地形、航路標識などを表示した図誌でありますが、最近はもっと広義に「海の基本図」の資料測量や「大陸棚延伸」の国連機関への申請資料等広範な業務を実施しています。 そしてこの業務の部署は以前水路部と呼ばれましたが、最近海洋情報部と改称されました。 海洋情報部の業務のための船艇は測量船、測量艇と呼ばれ、上に図示します。 測量船には測位装置、マルチビーム音響測深義、音波探査装置、流速計、水温計、等多彩な海洋観測装置を備えています。

拓洋<1983>・・・大型測量船、外洋を含む全海域での観測ができる。 2012年度に延命工事が行われ、ROV(Remote Operating Vehicle遠隔操作無人機)等最新の観測機器を備えた測量船になった。 また本船は搭載測量艇の他に、無人操縦も可能な特殊搭載艇じんべいを搭載し、じんべいによる海底火山噴火現場等危険海域の無人調査も可能。

天洋<1986>・・・中型測量船、港湾、沿岸域の海底地形調査等をする。 狭浅所は搭載作業艇で測量する。
明洋<1990>級・・・天洋の改良型中型測量船、本級中の海洋は2001年工作船事件で自沈した工作船の捜査に活躍。
昭洋<1998>・・・・大型測量船、デイゼル電気推進式、シップ・オブ・ザ・イヤー受賞。 また本船は搭載測量艇の他に無人操縦も可能な特殊搭載艇マンボウⅡ を搭載。

はましお<1991>級6隻・・・小型測量艇として港湾とその周辺の測量を担当する。 本級は各保安本部に配属されている。 因みに本級以外の測量船は保安本部配属ではなく本庁配属。

海上交通システム研究会(MTS研究会)では2014年10月に123例会として海図に関する研究会をやりましたが、席上の質疑応答において、日本のこの分野のレベルについて、測量船等、技術的には世界のトップレベルであると発表されました。 しかし発行した海図が広く世界に流通しているという面では、英国海軍水路部(United Kingdom Hydrographic Office-UKHO)が断然トップであると表明されました。 私はその研究会の感想として、フェニキア等の古代文明からの海図の発達歴史や、英国海軍の J・クック艦長の海洋調査、探検航海記などの「海図文化」ともいうべきひとつの文化があると感じ、そのことを会誌MATRIXに発表しました。[1] 

     [1] 神田修治 海図の文化を学ぶ-MTS123例会の感想 MATRIX87 2015-02



船のカタチ(76)へ      ギャラリーのトップに戻る      船のカタチ(78)へ