船のカタチ(83)  北欧の船 スエーデンJohnson Lineのカーゴライナー
              ARGENTINA <1935>級、 SEATTLE <1947>級、 RIO DE JANEIRO <1957>級、
              YAKIMA VALLEY <1963>級

                                                                 2016-11 神田 修治
注 : 図の左側は真横側面図、右側は右舷45°前方から見た図を示す


スエーデン船社Johnson Lineは1904年創業の名門船社でしたが、保有するカーゴライナーは、未来を先取りしたような斬新な船のカタチであり、また意欲的な技術開発がありました。 むかし私は「船の科学」や「Motor Ship」等の雑誌でSEATTLE級やRIO DE JANEIRO級の写真、GA、や記事を見て憧れたものでした。 またスエーデンは当時一流の造船国であり、Gotaverken、Eriksberg、Kockums、Lindholmen、等の造船所がありました。 Lindholmen 社はJohnson Lineの子会社でした。 1960年私がKHIへ入社したとき先輩から「英国はもはや我々の敵ではない、今後はスエーデンの造船所に学ぶべきだ」と言われ、先輩の強い鼻息に感心したことを覚えています。 その後まもなく日本は世界一の造船国となったのでありました。

ARGENTINAは戦前のカーゴライナー、2軸の快速船、船のカタチは当時よく見られたセミアフトエンジン。 
SEATTLEは欧州-北米太平洋岸航路カーゴライナー、デイゼル2機2軸、20ノットの高速船、荷役装置はデッキクレーン、船のカタチは丸みのある長大なハウスがデッキクレーンと相まって斬新で優美。 だが私は長大ハウス後部に囲まれたハッチの荷役不便等、カタチをよくするために機能が犠牲になったところもあると思う。 私は船のカタチは重要と思うが、やはり機能・性能が第一で、その上でカタチをよくするよう工夫すべきと思います。 しかし模型作りの船好き者には、このハウスの後部の入り組んだ構造は魅力的であったと思います。
RIO DE JANEIROは欧州-南米航路、冷蔵貨物重視、ハッチ3列、デッキクレーン、デイゼル4機2軸のマルチプルエンジン等の新機軸。 この船は機能もよくカタチもよい船であると私は思いました。
YAKIMA VALLEYは欧州-カリフォルニア航路冷蔵専用船(Reefer)、2機1軸、可変ピッチプロペラ、の新機軸。 船のカタチはRIO DE JANEIRO級の発展型といえる斬新なカタチです。

このように、この頃のJohnson Lineの船は、デイゼル機関のマルチエンジンや可変ピッチプロペラ等、種々の先駆的な新機軸を有する高性能船で、船のカタチも未来的な斬新なカタチでありながら、むかしからの船の象徴としてマストを高々と掲げたよいカタチであったと感心します。 ただしイマドキの視点からは、コストの高い船であったと思います。




船のカタチ(83A)  Johnson Lineコンテナ化時代の船
               ACONCAGUA VALLEY <1968>、 AXEL JOHNSON <1969>、
               MARGARET JOHNSON <1970>、 PACIFIC <1970>

                                                                2016-11 神田 修治
注 : 図の左側は真横側面図、右側は右舷45°前方から見た図を示す


1970年代には造船国・日本の進出等によりスエーデンの造船には凋落のきざしが見られました。
またこの時代、船舶の大型化、船体形状改善、造船工作法改善、荷役設備の改善等の技術開発、およびコンテナ船の出現・発達がありました。 船社Johnson Lineもこれらの影響を受けたといえます。

ACONCAGUA VALLEYは前出YAKIMA VALLEYの流れをくむ冷蔵運搬船Reeferで2列ハッチ、推進プラントはデイゼル2機1軸、可変ピッチプロペラCPPです。 本船はスエーデンの造船所ではなくフィンランドWaltsilaで建造されました。  Waltsilaも伝統ある造船所だがコスト競争力が比較的強かったのだと思います。 以後Johnson は多くの船をWaltsilaで建造します。 ついでに、Waltsila社もその後クルーズ客船の建造で名を馳せたり、他方経営的には苦しい経験をします。

AXEL JOHNSONはコンテナ船、デッキ走行クレーンを有し、荷役装置ありのコンテナ船です。
MARGARET JOHNSONは同型のコンテナ船だが荷役装置なし(gearless)です。
これらのコンテナ船は、当時の日本のコンテナ船 箱根丸<1968>級(船のカタチ-20)と同程度の性能の船だが、コンテナ化において日本のような果敢さがなく、ハウスの前面が曲面であったり、船首と船尾に従来
式の貨物艙やクレーンがあり、コンテナ化の中カーゴライナーのデザインに躊躇・迷いが見られると私は思います。

PACIFICはCar and Timber carrier自動車木材運搬船。自動車2台をひとつのプラットフォームに乗せてユニット化した貨物や定尺に製材・梱包した木材を、コンテナのようにデッキ走行クレーンで積卸する船です。 これは広口ハッチ貨物船(船のカタチ-35)の先駆であり、独特のコンテナ化対応であったと、私は考えます。

このようにJohnson Lineは1904年に創業して以来、高性能・高機能でカタチ美しい船を建造し運航したが、コンテナ化やコスト競争等厳しい経営環境の中1990年代に事業から撤退、姿を消しました。 また同様に、スエーデンの有名造船所も、Gotaverken社、Eriksberg,社、Lindholmen社等は姿を消し、Kockums社は残ったが商船の建造は止めて潜水艦や艦艇の建造をやっています。 Kockums社といえば、日本潜水艦そうりゅう級のAIP、スターリング機関(船のカタチ-50)はKockums社の技術がもとになっています。


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