船のカタチ(95)  USN-ARG 米海軍水陸両用揚陸軍艦艇
              LST 揚陸艦、 LSM 中型揚陸艦、 LCU 小型揚陸艇、 LCM 兵員揚陸艇、
              AAV 水陸両用戦車、 LSD ドック型揚陸艦 HARPERS FERRY <1995>級、
              LPD 多機能ドック型揚陸艦 SAN ANTONIO <2006>級、
              LHD 空母・ドック型揚陸艦 ESSEX <1992>級、
              LHA 空母型揚陸艦 AMERICA <2014>級、
              T-ESD 揚陸プラットフォーム JOHN GLENN <2014>級、
              LCAC エア・クッション揚陸艇
                                                                 2017-11 神田 修治



USNの、いまひとつの戦略システムと私が思うものは水陸両用揚陸軍団ARGです。(船のカタチ-93)
ARGの主要な艦艇を上図に示します。 一対の図の左側は側面図、右側は右舷45°後方から見た図です。 前方でなく後方とした理由は、これらの艦には後部に、舟艇出入口扉や艦尾錨等の工夫があるのでそれを表示するためであります。

最上段、
LSTLSMLCULCM、は二次大戦中に開発され、運用されました。 LSTLSMは戦車や兵員を載せて航洋し、揚陸地点に近づくと艦尾の錨を入れてケーブルを繰り出しながら前進し、渚へ乗り上げ(Beaching)し、艦首の扉を開きランプ(道板)を出して揚陸します。 揚陸終了すればランプを収め扉閉め、エンジン後進、錨ケーブル巻き上げながら渚を離れる。 LCULCMは小型で、LST等に搭載し、沖合でおろして兵員が乗移り、揚陸します。 このような作戦は渚の磯波や砕波があり、その間艦艇は荷役中という無防備で脆弱という問題があります。 1944年のノルマンディ作戦では海象の予測のため気象学者が動員されました。 それ以後海洋学、気象学が進展し、今では海洋学、気象学は造船の重要学科です。
二次大戦後、上記の脆弱性への対策が研究・開発されました。ヘリコプタ(MH-53、-60)や垂直離着陸機(V-22)による空輸、
LCACにより渚を急速で通過する方法等が実用化され、それに応じた母艦として次のような揚陸艦が開発されました。
LSDドック型揚陸艦HARPERS FERRY <1995>級LPD多機能ドック型揚陸艦SAN ANTONIO <2006>級は後甲板からV-22、MH-60等を発着。船体後部のドックにはLCACLCUを収容し、艦尾の門扉を開いて発進。LPD船体はステルス船型。
LHD空母・ドック型揚陸艦ESSEX <1992>級は航空機を重視、全長飛行甲板の空母型。ドックもありLCACLCUも運用可能。
LHA空母型揚陸艦AMERICA <2014>級はさらに航空機重視、ドックをやめ、F-35、AV-8、V-22、MH-60等航空機のみの運用。
T-ESD揚陸プラットフォームJOHN GLENN <2014>級は半潜水型プラットフォームで航行中は上図のWL-1水線だが、荷役時はWL-2まで沈めて甲板上に各種の浮かぶ貨物を曳航、位置きめの後、WL-1まで浮揚し、それを固定積載する。 一種のバージ運搬船で、貨物は浮くもので喫水制限あるが、バージに積載していろいろの資材が積載・輸送可能です。
LCACエア・クッション揚陸艇AAV水陸両用戦車は、スケールを統一すると図が小さくなり、詳細が判りにくくなったがご寛容ください。 詳細を知るには、LCAC、AAVをキーワードにしてググると詳細な情報が出てきます。

揚陸艦システムは二次大戦中に発生し(上図最上段)、戦後に技術開発が進められ、ビーチング中のリスクは回避されたが、大がかりなシステムになってしまった。(上図2段目以下)  これは尖閣問題等を抱える日本にも参考になると思う。



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