船のカタチ(99A)  USNから 海上自衛隊 (海自) への支援 - 艦艇の供与
              PF TACOMA級 → PFくす級、  LSSL級 → LSSLゆり級、
              DE CANON級 → DEあさひ級、  AMS BLUEBIRD級 → MSCやしま級
              DD LIVERMORE級 → DE あさかぜ級、  DD FLECHER級 → DD ありあけ級
              SS GATO級 → SSくろしお
              
                                                2018-03 神田 修治

海自への米海軍USNからの支援の第二として、艦船の貸与や売却等の供与がありました。 
海自発足直後、海自の艦艇数は圧倒的に不足、これを補うためUSNは海自へ多数の艦艇を供与しました。 
これは海自にとって有難いことであったが、またUSNにとっても、戦後不要になり係船されていた艦艇の有効利用でもありました。 それらを下に図示します。 (斜前方から視た図あり)



PF TACOMA → 護衛艦くす級、主機はレシプロ、旧式だが信頼性は優れていた。 多数供与され、海自の多方面で活躍。
DE CANON級 → 護衛艦あさひ級、量産型のDE護衛駆逐艦でブロック建造法が採用された。 量産であるが、決して粗製乱造ではなく、たとえば2軸2舵で操縦性がよく、敵の攻撃、損傷に対しても残存性が大と言えます。 なおDEとはUSNでDestroyer Escortすなわち輸送船団の護衛等を任務としていたが、海自では小型のDDとして、沿岸、近海の警護を任務としていました。 本艦はむかし映画「眼下の敵」で独潜をやっつける護衛艦として登場、艦長役はR・ミッチャム、私も興奮して観たのを憶えています。
DD LIVERMORE級 → 護衛艦あさかぜ級、二次大戦中の米駆逐艦でFLECHER級の一代前の艦、すこし古いカタチ船首楼船型、37ノットの高速であった。 海自においては、実働よりも学習の教材等特別の用途に使用されたのではないかと、私は思います。
DD FLECHER級(F級) → 護衛艦ありあけ級、二次大戦中の、米駆逐艦の代表的な艦。 そして旧日本海軍の駆逐艦陽炎級のライバルでした。(船のカタチ-90) また前述(-99)のはるかぜ級の設計に参考となったと思われるが、1960年の貸与では時期すでに遅く、現物を見て参考にする役には立たなかったと思う。 このことはUSNも意識し、F級は遅く供与したのだろう、と私は思います。
SS GATO級 → 潜水艦くろしお、二次大戦中量産されたクラス。 このクラスにより日本は、通商破壊、兵糧攻め、戦線への物資補給遮断等、日本は苦しめられた因縁があります。(船のカタチ-90) 海自では、ASW訓練の標的潜水艦として利用されたようです。 また海自の新造潜水艦建造の参考資料になり、川崎は本艦の整備工事を担当し、その経験をおやしお(-99)建造に生かしました。
LSSL級 → 警備艇ゆり級、二次大戦中量産され、多数貸与されたが航洋性能が不充分で、早期に返還されました。(資料1)
AMB ALBATROSS級→掃海艇うじしま級 二次大戦中量産された掃海艇、海自が実施していた掃海作業に合流活動した。.
AMS BLUEBIRD級 → 掃海艇やしま級、本艇は大戦後建造された当時USN最新型の掃海艇でありました。 海自では、うじしま級同様、掃海作業に合流し活動した。 また海自の掃海艇 かさど級船のカタチ-105)設計・建造の手本になりました。(資料2)

これらの艦艇は概して、当時のUSN第一線の艦艇ではなく二番手の艦でした。 例えばDDでも1954年まず貸与されたのは
LIVERMORE級であり、FLECHER級ではなく、FLECHER級が貸与されたのは、後継新造艦 F.SHERMAN級C.F.ADAMS級-97)が就航した後であり、また、手本としたはるかぜ級が竣工した後の1960年でありました。 これはUSNの立場から考えれば当然のことであったとも思います。 やはり第一線の艦艇は、供与せずワークホースとして活用、温存したいと思ったでありましょう。 
ただし
AMG BLUEBIRD級のみは事情が異なり、本艇は戦後新造の新鋭艇でありました。 日本では自衛隊発足より前から、旧海軍残務、保安庁業務として、日本近海だけでなく朝鮮海域まで出かけて、戦中に敷設された残存機雷等の掃海、航路啓開を、多大の苦労をして行い、立派な実績を有していたのでありました。(資料2、3) これにはUSNも一目置いていたので、最新の艇を供与したのであろうと私は思います。 これらはそれぞれ活動し、海自の艦艇が充実するに伴い、1970年代には返還、除籍されました。

     (資料1) 海上自衛隊全艦艇史、世界の艦船869、2017-11増刊
     (資料2) 広郡洋祐、海上自衛隊木造掃海艇建造史、世界の艦船2010-05
     (資料3) 福本他  海上自衛隊の掃海能力  世界の艦船2015-10


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