船のカタチ (7)   QM1とQM2 - 新旧の QUEEN MARY   2010-07 神田 修治

 QM1<1936>とQM2<2003>を示しますが、この間、実に67年です。
 この間、オーシャンライナーはその役割を終え、遠洋航路の客船は全てクルーズ客船、という時代になりました。
 Cunard社は経営困難となり、いろいろあったが結局1998年、巨大クルーズ会社Carnival社に買収されました。
 Carnival社のもとで作られたQM2は、Cunardブランドを利用して売り出されたクルーズ客船だと私は思います。

 これら2船を並べて見て私は、断然QM1のカタチのほうが好きです。 友人にもそう言う人が多いです。
 それは私たち老年のノスタルジアかとも思うが、QM1は人々の憧れや期待を担っている、という感じがします。

 K-シニア会員の赤木新介先生はQM2の地中海クルーズの乗船記を発表しておられます。
(1) 
 その中にQM2の設計者S.PayneがQM2はオーシャンライナーだと言っている、とあります。 そこで私は思うに、
 Carnival社は人々のノスタルジアに訴えて、Cunardブランドを売り込もうと、QM2をオーシャンライナーだとした
 のではないでしょうか。 そう思いながら見ると、QM2のカタチにはQM1に似せようという工夫が見られます。
 ハウスの前面はQM1の急な階段状に似せて傾斜した曲面とし、階段状を表すためにワザワザ黒色の帯を塗装
 しています。 ハウスの後部はQM1ではなだらかな階段状だが、QM2では風防壁のカタチだけを階段状にして
 QM1に似せています。

 しかし私にはこれらの工夫にはワザとらしい小細工と下心が感じられ、好感が持てません。 赤木先生は、QM2
 はオーシャンライナーというふれこみだが、やはりこれはクルーズ船だ、記しておられます。
(2)

 以上にQM2のカタチを、私は独断と偏見でけなしましたが、本船の航海船速は29ktsを超えており、技術的には
 大変立派な船で、上記の67年間の船舶技術の進歩が盛込まれています。 それについては次回に述べます。
 QM2の絵を描くにあたり、K-シニア会員 野沢和男先生の本が大変よい参考になりました。
(3)

   文献  (1) 赤木新介 「クインメリー2 地中海クルーズ乗船記」 MATRIX55 2006-10
        (2) 赤木新介他 「オーシャンライナーとクルーズ客船の比較」 MATRIX63 2008-10
        (3) 野澤和男  「船、この巨大で力強い輸送システム」 大阪大学出版会 2006


                                                                (次回につづく)

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