1960年代後半から日本の船社 NYK、MOL、K-Lineは欧州航路用にサービス速力 21ノットの高速Cargo Liner船隊を整備しました。 それが上掲の加賀丸(K丸)、ぶれーめん丸(B丸)、いんぐらんど丸(E丸)の各型です。
K丸は山城丸 (船のカタチ-14 参照) の大型化・高速化で手堅い設計といえます。 造船所は三菱神戸。
B丸は斬新で、エンジンとハウスをK丸よりもさらに1区画後方へ移すとともにデッキクレーンを採用しました。
造船所はMOL前身の三井船舶とOSKの縁からか、2隻が三井玉野、2隻が三菱神戸です。
E丸はさらに斬新で、デッキクレーンの他、スツルケンマスト、3列ハッチ等の新技術が見られます。 川崎神戸建造。
船のカタチを見ると、K丸は山城丸とほとんど同じです。 このことはNYKの伊勢丸等にも見られ、NYKは山城丸のカタチに大きな自信を持っていたことがうかがえます。 ただしエントツのカタチは山城丸のトルコ帽型ではなく円筒型です。 私はNYK伝統の円筒のほうが好きです。
B丸はすこし前に発足したMOLのLivery(彩色)でカラフルとなり、新生MOLの意気が感じられます。
E丸では、スツルケンマストの太く斜めに突き出したモノは目をひきます。 E丸のハウスのカタチは箱型で、舷側の通路デッキはなくその分幅がせまく、航海甲板とボートデッキの一部のみ左右に張り出したカタチであり、どこか軍艦の上構に似て、なかなか良い造形になっていると私は思います。 E丸は
船のカタチ-14 に記した ねばだ丸 にくらべ大きく変わったように見えるが、この間に建造された仏蘭西丸も並べて見ると一連のながれが感じられます。 このことは別に記しました。(ref.1)
上図の3船のカタチはCargo Liner発達の極致といえ、美しいカタチだと思います。 そして多様です。 しかしこれらの船が長期間よく働いて会社業績に寄与したかには疑問が残ると私は思います。 例えば極度にやせた船体や3列ハッチ等の多様で複雑な船倉のパターンとか、デッキクレーンやスツルケンマスト等の多種の荷役設備は、使いこなすために高度の知識・配慮を要し、かえって不便なこともあったのではないか、と私は思います。 このころコンテナ化の波が押し寄せ、これらの船は早期に姿を消したため、このことについてはよくわかりません。 K丸型は後にコンテナ船に改造され長く活躍しましたが、保守的な手堅い設計がよかったのかと思います。
今回も45度斜め前方無限遠から見た図を入れました。 B丸のデリックポストの有様やE丸のスツルケンマストやハウスのカタチ等、側面図だけでは表現できないところもよくわかります。
(ref.1) 神田修治、船のカタチについて、MATRIX63、pp42
(次回につづく) |
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