川崎汽船(KL)は欧州航路の閉鎖性に鑑みこれへの進出には慎重で、ニューヨーク航路に注力しました。
その就航船を図示しますが、技術的随想を KHI 設計と KL 工務をやられた高城清氏が著しておられます。(1)
KI 級は戦前のニューヨーク急航船として有名でした。聖川丸は戦災で沈没したが水深が浅かったので引揚復旧し、KL の復興に貢献しました。
KA 級は聖川丸とフリートを組むため3隻建造され、基本的な要目は KI 級と同じですが、溶接の採用等技術の進歩があります。 船のカタチとしては航海船橋ウイングの屋根をなくしハウス前面がモダンになったと思います。 また船首のカタチもセミマイヤー型というかカットアップが大きくなっています。
N 級は他社船の長さ(Lpp)145mが一般的であった中150mとし、長船首楼タイプと相まって北太平洋の荒天等の実海域もよく走りブルーリボンを獲得し、KL 業績に貢献しました。 またハウスのサロンデッキは両舷の通路を廃止し船幅いっぱいに船室を配置していますが、良いカタチと私は思います。
F 級は NYK 山城丸(船のカタチ-14)に似たカタチだが、Lppは山城丸の150mより長く156mです。 またハウスのカタチは N 級の考えをさらにおし進めた新型となりましたが、ナカナカよい造形と私は思います。 F
級の船名は仏蘭西丸、伊太利丸等と欧州国名であり、KL の欧州航路への思いが込められていると思います。 現に1968年 KL の欧州航路開設にあたり、仏蘭西丸は第一船として就航しました。 F
級もブルーリボンを獲得しました。
上掲各船は同時期、同種の他社船と比べてLppを5m程度長くして船型を工夫することにより、主機馬力は低めでも実海域でよい走りを発揮したといえます。 実海域での走りにはLppと、船首部フレア等の水線より上のカタチが重要と思います。 そのことを思いながらこれらの船のカタチを見ると、私は伸びやかな快走を感じます。
(1) 高城清、NEW YORK LINER四代記、船の科学1992-04
一部を改正・補足した (日本の定期貨物船) を 船のカタチ(28A 29A 31A) として掲載
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