Significant Ships 2011にはいくつかのユニークなカタチの船が出ていますがそれを見てみます。
C船はPCC(自動車運搬船)で水線上船首部が球状です。 PCCでは水線上部分の空気抵抗がかなりのものになるのでそれなりの抵抗低減の効果があると思いますが、その他にもこのカタチは、流線形で抵抗少という感覚や高速感の効果もあると思います。 ユニークだが悪くないカタチで、よく設計できていると私は思います。
E船は海底石油掘削の作業員のホテルシップとして開発されたもので、フォイトシュナイダープロペラとDPS(自動位置保持装置)により掘削リグや掘削船に接近して位置保持し、前部のギャングウエイで掘削船等との間を人員が往来するというものです。 船内には大規模な居住設備があり、前甲板は掘削パイプ等の補給資材が積載できるという特殊な役目の船です。 それにしてもこのカタチは異形だと私は思います。
SP船とS船はRORO船です。 RORO船のカタチはいろいろ試みられていますが、まだ発展途上のようです。 これにはブリッジを船首に置くものと、後に置くものがあり、それによって船のカタチが大きく変わります。 図においてSP船は前ブリッジ、S船は後で、それぞれ経験を積みカタチも洗練されてきたと思います。 見る目がなれてくるということもあるかと思います。 なおS船はSig.
Shipsの2012年版掲載の図面から作図しました。
上掲のC船とS船は旭洋造船の建造ですが、旭洋造船は船のカタチについて強く意識して設計・建造していることが伺えます。 そしてそれは大変よいことと私は思います。 ところでC船とS船はどちらも日本の造船所で建造されたのに、その一般配置図(GA)は日本のジャーナルでは発表されず、英国のSignificant
Shipで公刊されたものです。 私は、英国のこの分野での底力に感心するとともに、日本のこのような現状を残念に思います。
(文献) Significant Ships of 2011 (RINA 2012) および-Significant Ships of
2012 (RINA 2013)
(船のカタチ-45a) C船の発展型 井本商運の次世代内航コンテナ船
先日(7/16)、MTS研究会 [1] の用件で、井本商運を訪問したときに「創立40周年、第三の創業」と銘打ったパンフレットを頂きましたが [2]
その中に球状船首ブリッジの次世代内航コンテナ船のイメージ図がありました。
井本隆之社長に聞くと、7000GT、530TEU、2015年竣工予定だそうです。
それらの情報をもとに、私の想像も入れて作図して見たものが下図です。
|
一目瞭然、これは「船のカタチ(45)」中のCITY OF AMSTERDAM(C船)の派生型で、水線上船首部が球状です。 造船所も同じ旭洋造船で、C船はPCCだが本船は内航コンテナ船。 コンテナ船もPCCと同様、水線上の空気抵抗の低減も重要です。 また目立った流線形は、関係者だけでなく一般市民の注目も集めると思います。
C船の水線上船首部球状というカタチは、井本商運の次世代内航コンテナ船という後継・同類が出てきたということから見ても成功であったと思います。
近年、衣服のファッションや自動車、鉄道車両、身の回りの機器・器具にもカタチ・デザインの良し悪しが云々されるようになり、一般市民の人々のカタチ・造形への関心が高くなり、それに伴い視線が鋭く、評価が厳しくなってきたと感じますが、船のカタチにおいてもこのような試みが盛んになればよいと思います。 しかし大衆迎合はよくないとも思います。 船のカタチは、その船の機能・性能の追求との調和やバランス、さらにはその船が大切な仕事を遂行しているということをあらわす風格といったものが必要と思います。
このように、船舶設計に関係する者が船のカタチについて強く意識し、その成果が人々から注目されることはよいことと思います。 そしてこのことは私のこの「船のカタチ」シリーズの狙いのひとつでもあります。
注記と資料
[1] MTS研究会、海上交通システム研究会、以前(2009年7月)K-シニア総会で紹介したことあり。
[2] 井本商運株式会社創立40周年 第三の創業へ、井本商運株式会社パンフレット、2013
|
|