船のカタチ(44)  ブラジル海事最近の発展・・ Significant Ships 2011から
                  LOG-IN JACARANDA (L船)、 CELSO FURTADO (C船)、
                  VALE BRASIL (V船)、 PETROBRAS 10000 (P船)
                                                                   2013-08 神田 修治


RINA(英国船舶工学会)は毎年Significant Shipsという年鑑を発行しています。 これは前年に竣工した顕著な船を約50隻、写真、GAとともに紹介したもので、私たちにとって参考になります。 さきの3月に2012年版が送られてきたのであわててその前に送られてツンドク状態であった2011年版を通読したところ、ブラジルの海事の発展が印象的でした。 そこで今回はSignificant Ships of 2011からブラジルに関係する船を示します[1]。

L船はブラジル船社所有、ブラジル船籍、ブラジル造船所建造の荷役設備つきコンテナ船です。
C船はPETROBRASのブラジル船籍、ブラジル造船所建造のプロダクトタンカーです。
V船はブラジルから鉄鉱石を積出す、ブラジル船籍の40万トン鉱石船で、建造は韓国の大宇。
P船はブラジル沖合の海底石油を開発するPETROBRASの掘削船で、Sig. Ships の2009年版からです。

ブラジルは日系人も多く、日本に関係の深い国で、以前にもISHIBRAS造船所の進出、活躍がありました。 これについてはKシニア海友フォーラムで石津さんの詳細で率直なご発表がありました[2]。
最近また経済、海事の活動が活発になりましたが、今度こそは鉄鉱石、石油等の資源とブラジルの人々の活動がうまくかみ合って発展し、安定して末永く繁栄すればよいと私は期待します。

上掲の船たちは、中型コンテナ船、中型プロダクトタンカー、大型鉱石船、海底掘削船等であり、一般的によく見られる船で、そのカタチもよく見られる普通のカタチでありますが、いずれも機能的にも、カタチとしてもよくまとまっていると私は思います。

Significant Ships2011にはユニークなカタチの船も出ていますが次回(船のカタチ-45)はそれについて記したいと思います。

       文献
  [1] Significant Ships of 2011(RINA 2012) および -of 2009 (RINA 2010)
  [2] 石津康二、石川島ブラジル造船所(ISHIBRAS)成功と挫折の軌跡、海友フォーラム16回懇談会 (2012.4.16)



    (船のカタチ-44 追加)

前掲図では、小は5万dwt中型プロダクトタンカーから、大は40万dwtのULOC(超大型鉱石船)までを同一スケールで並べて図示したので、ウマク収まらず、鉱石船VALE BRASILの側面図は中央部を切欠いたヘンな図示になりました。 そこでここにはVALE BRASILの完全な側面図を下に示します。 ついでに、GAに基づき、平面図と正面図も図示しました。 このような図を三面図、投影図ということはよく知られています。



この図を描いて見て思うことは、やはり三面図では物足りない、味気がない。 特に平面図は甲板塗色の茶色一色で変化もなく味気ない。 ほんとうはハウス前面、後面、側面の白色やエントツのグリーン等、なかなか良い彩色なのだが、これらはみな垂直なので平面図では線になってしまうからです。

このように、船などの複雑な立体では斜めから見た画像が構造・カタチも直観的にわかり、美しいといえます。 また船は人々から水平面内いろいろの方向から見られることが多いので、カタチや色もこのことを意識して設計されているようです。 このことから斜めといっても、水平面内の、斜め前や斜め後から見た姿が大切といえます。 この「船のカタチ」シリーズの図が側面図と、斜め前からの図で表現している理由は、このためであります。

もちろん真横、真上、真正面から見た三面図、投影図も大切であり、図を見て間違いなく形状を理解するためには、この図法が最適であることは私たちのよく認識しているところです。 ついでに、このように3次元の立体を2次元の図で表現する投影図の方法の基礎を築いたのは、18世紀末フランス革命当時、エコール・ポリテクニクの設立に尽力した、ガスパール・モンジュ (G.Monge)だそうです[3]。 私たちは普段あたりまえのこととして投影図を使っていますが、ときにはその起源について思いをいたすことも悪くないと思います。

さらに最近では計算機の発達により、3D-CAD等のように3次元の形状を3次元のまま取扱うことができるようになったことも私たちは知っています。


       文献
  [3] 機械工学便覧 β1デザイン編 第1章総論、日本機械学会、2007、  ppβ1-1


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