船のカタチ(100B)  海上自衛隊護衛艦 DD汎用護衛艦 - 2/2
                はつゆき <1982>級、 あさぎり <1988>級、
                むらさめⅡ <1996>級、 あきづきⅡ <2012>級
              
                                                2018-04 神田 修治



上図は はつゆき級から近年までの護衛艦を示します。 はつゆき級は画期的といえます。 それはガスタービン(GT)主機、対潜ヘリコプター(HS)、フィンスタビライザー(FS)を初めて採用し、以後すべての護衛艦に、これらが採用されているからです。

GTは航空機用ジェットエンジンの転用による舶用GTで、蒸気タービンに比し格段に小型軽量で起動迅速であります(燃費は劣る)。 DD等艦艇への採用は1960年頃、英国やソ連に始まり、USNではDD SPRUANCE船のカタチ-97)に採用され、海自で大型艦に採用されたのは、
はつゆき級からです。 思えば舶用GTはむかしフリーピストン式等研究されたがウマクゆかず、航空機エンジン転用方式ではじめて実用化できました。 ところで現在航空機用ジェットエンジン世界の三大メーカはロールス・ロイスRR、ジェネラル・エレクトリックGE、プラット・ホイットニーPWの3社だが、川崎はRRと、石播はGEと、三菱はPWと仲がよく、各社はそれぞれかなりのシェアをもって航空機ジェットエンジンを製造しています。 艦艇用GTは、はつゆき級RR、それより後の級ではRR and/or GEです。

HS対潜ヘリコプタはDDから発進し広範囲に機動的に行動し、ディッピングソナーやソノブイにより潜水艦を探索し、短魚雷、爆雷等で攻撃するもので、HSの運用によりDDのASW能力は格段に向上しました。
FSフィンスタビライザーはミサイルの発射、HSの運用等のために重要と私は思います。

はつゆき級はこのように盛沢山だが反面、窮屈になったようです(資料1)。 あさぎり級は大型化により窮屈を改善し、堪航性を向上しました。 艦のカタチも艦首の傾斜、2本煙突等大きく変わりました。 むらさめ級からは、船体、上構の側面を傾斜したカタチとし、敵からのレーダ電波を斜めに反射し探知されにくいステルス船型となりました。 本級の中、たかなみ以降は主砲を76mmから127mmに大型化しています。 あきづき級はフェーズドアレイレーダのアンテナを取り付ける上構のカタチがピラミッド型となりました。

このように海自の護衛艦はGT主機、HS対潜ヘリ等、明確な思想により発達進化しましたが、それにしては多種です。
USNの護衛艦は船のカタチ-96-97で述べたように中心勢力はTICONDEROGA級(約20隻)とARLEIGH BURK級(62隻増加中)の2種のみ、すなわち日本海自の多品種少数に対しUSNの少品種多数です。 これの一因は日本の専守防衛に対しUSNは攻撃を考えているからではないかと私は思います。 攻撃では戦闘全体を主体的に計画できるのに対し、防衛という考えでは、敵の出方予測が多種であれば対応して軍備も多種になるのではないか、と私は思います。 多品種少数は日本の民族性ともいえ、旧日本海軍の個艦優秀(船のカタチ-86)につながると私は思います。 これを悪いという論もあるが、私は必ずしも悪いとは思わない。

   (資料1) 海上自衛隊全艦艇史、世界の艦船869、2017-11増刊 

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