船のカタチ(22)  コンテナ船の失敗と克服
              SEALAND GALLOWAY型、 AMERICAN NEW YORK型、
              PRESIDENT TRUMAN型、  APL CHINA型
                 2011-10 神田 修治


上掲(上からS船、AM船、P船、AP船)はコンテナ船の発達、見方によっては失敗とその克服といえます。

前述(船のカタチ-21)のようにコンテナ船の高速化と大型化が進みました。 S船は高速化を追究し、タービン2機2軸 120,000PS、航海速力33ノットというシロモノです。 一方AM船は大型化を追究したものでパナマックス4000TEU、当時世界最大TEU でした。 そのかわり航海速力は18ノット、コンテナ船としては低速で船体も肥大船型でした。 運航の結果S船は建造費、燃費が 高すぎて失敗、AM船はスピード競争に負けて失敗しました。 「高速化」とか「大型化」というイデオロギーが専行し、現実的コンプロマイズを軽んじた失敗と私は思います。
そしてその船主USL(United States Lines)社もSEALAND社も姿を消しました。

そのあとのP船は、幅40mのポストパナマックス型、ファインな船型とし、機関は当時世界最大出力のデイゼル1機1軸、バランスのよい船です。 運航成績も良好だったようで、その発展型のAM船が建造されました。 ハウスはコンテナ船倉1BAY程度の短くて背の高いハウスで、その下は大型で長細いデイゼルを収めるため部分的に後方に突出した機関室区画としているが、これは前回(船のカタチ-21)記した機関室とハウスの問題への解決策と思います。 また甲板上コンテナ積段数を増大し、大がかりなラッシングブリッジを設けています。 これらは現在のコンテナ船にも継承されており、P船は現在のコンテナ船のカタチを創始した傑作だと私は思います。

S船とAM船のその後は、S船は高速を生かして米海軍の輸送船に改造されて活躍しており、AM船はスピード競争の激しくない非幹線の航路で現在も活躍しているようです。 またAPL(American President Lines)社はむかし太平洋客船航路も経営した名門船社で、上述のようにコンテナ船分野でも健闘したが、アジア船社の台頭のため、シンガポールのNOL社に買収されました。  しかしAPLというブランド名はいまも残っています。

AM船とAP船の一部は韓国で建造されました。 韓国造船はこの時期に大型高速コンテナ船設計・建造技術をドイツ造船所等から学び、蓄積、琢磨し、現在ではコンテナ船建造で世界を席捲するに至ったと私は思います。


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