船社と造船所の協同により、よい船が開発され、その次の開発も同じ協同により進められ、それが長年続くのは善いことと私は思うし、実際にもよくあることです。 以前にはNYKとMHI(横浜、長崎)、OSKとMHI神戸、三井船舶とMES、K-LineとKHI、GolarとKHI、MaerskとOdense等の協働関係があり、それらについてはこのシリーズでも述べました(船のカタチ-28、 -29、 -30、 -31、 -23、 -36)。 最近はこの関係も薄れてきて、それは船価競争や技術競争等諸々の事情によるものであろうが、私としてはさびしい気がします。
ここには、この関係が現在も続いている例としてCOSCOとKHIによるコンテナ船を取上げます。
R船はPanamax、当時COSCOは他造船社にも同様の船を発注したが、そのあとPost PanamaxのL船はKHIのみに発注され、さらにKHIとCOSCOの合弁造船社NACKSでも建造され計13隻となりました。 R船もL船も船首はバルバスバウだがそのカタチが独特です。 水上部フォクスルのフレアが大きく、LWLでの流入角が鋭く、船首材はLWLより上でFPより後へ曲がっています。 当時これらの船型設計に関与されたKシニア会員岡本洋博士に聞くと、船首部の水流を後へスムーズに流して抵抗低減をはかり、併せて波浪中速力低下を小にすることを狙ったそうです。 Kシニア山野惟夫博士等による論文(1)にも流入角をシャープにすることが述べられており、質疑応答ではシャープな形状の工作困難について面白い討論が記録されています。
O船は10000TEU、B船は13000TEUのメガコンテナ船でNACKS建造だが基本設計はKHIです。
O船とB船の船尾トランサム下部は独特のカタチですがこれについても山野博士等の論文(2)があります。
B船のハウスはブリッジとエンジンに分かれたセパレートハウスで最近よく見かけるカタチです。
O船のハウス前面のカタチは独特でブリッジのウイングを骨組構造で支えているが、このアイデアはL船にも見られるし、B船にも受継がれています。 このようにカタチに一連の系譜・共通点があることは、関係者が一見して造船所がわかり、ひいては技術的特性も推測でき、大切なことであると私は思います。
(1)T.YAMANO etc., A Consideration on Stem Form for Fine Ships, 関西造協誌
N225 1996
(2)T.YAMANO etc., A Consideration on Transom Stern Form Design, 関西造協誌
N242 2004
(注) 上の各図で左側は側面図、右側は右舷45°前方から見た図(距離は無限遠)を示す。 為念。
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