前回(船のカタチ-56)は深海潜水作業を行う艦船を説明しました。
船の種類に潜水支援船(Diving Support Vessel-DSV)という一族があることを知って頂けばよいと思います。
今回からDSVのいろいろを見ます。 まず今回は、前回の「ちよだ」も属する海上自衛隊。 海自のDSVとして潜水艦救難艦ASRがあります。 海自のASRは潜水艦と同様に、米海軍から多くを学びました。
「ちはや」<1961>は米海軍ASR-FLORICANを手本として設計されました [1]。 本艦には潜水艦救難チャンバー(Submarine
Rescue Chamber-SRC)があります。 SRCはASRから出され、海中を下降し海底に沈没した潜水艦のハッチに水密に取付き、生存している潜水艦乗員を収容して上昇し、ほぼ大気圧のままASR艦上へ救助します。
このために、ASRは海面上で沈没潜水艦の直上に位置を保持する必要があり、錨による4点係留をします。 上図の艦尾に錨があり、ブイ(赤いもの)もあります。
また減圧症の予防、治療のためにDDCを2基有しています。 「ふしみ」は「ちはや」と同じ構想で建造され、2隻体制となりました。 SRCとDDCは「ちはや」では米海軍から供与されたが、「ふしみ」では国産としKHIで建造されました。
「ちよだ」は画期的新型艦、SRCをやめて海中を広く運動できる深海救難艇(Deep Submergence Rescue Vehicle-DSRV)が開発されました。また潜水作業のためのDDSも開発され、それは前回(-56)に述べました。 さらに4点係留もやめて、スラスタ自動制御で位置保持できるDPS(Dynamic Positioning System)を有します。
「ちはや」<2000>は「ちよだ」と同構想であり、さらに大型化、高性能化が図られています。
このように、海自は世界的にも完備した高水準の潜水艦救難システムを保有していると私は思います。
私はむかし1965年瀬戸内海で実施された潜水艦救難訓練に、造船所から参加し見学しました。 潜水艦が海底に沈座し、そこへ「ちはや」が探索、到着、係留し、SRCを降ろして潜水艦乗員を収容して救助する訓練でしたが、私も強く希望して潜水艦から救助されるチームに入れてもらい、種々体験、見学しました。
[1] 大野茂、潜水艦救難艦「ちはや」の計画等について、船舶1960
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