船のカタチ(58)   米海軍の潜水艦救難艦 ASR of USN
               FALCON <1919、1929>、  FLORICAN <1943>、  PIGEON <1973>、
               SSN LA JOLLA <1981、2000>
                                                                   2014-10 神田 修治


今回は米海軍の潜水艦救難艦です。 潜水艦は海中に潜るのだから、沈没しても艦内に人が生存している可能性は大で、この生存乗員を救出することは重要問題です。 これについては1920-30年米海軍のCP.Momsenを中心に研究され、脱出法(Escape)と救出法(Rescue)が開発されました。 脱出法は二重ハッチを備えた脱出トランク(Escape Trunk-ET)に乗員が入り、外圧と均圧して艦外へ出て浮上する方法で、このための潜水呼吸器Momsen LungやSteinke Hoodが開発されました。 一方RescueにはSRC(Submarine Rescue Chamber)が開発されました。 これは潜水艦のハッチに水密に着座(mating)して潜水艦乗員をほぼ大気圧のまま救出できる潜水チャンバーです。 このため、潜水艦には沈没を海面上に知らせる救難ブイを設けるとともに、SRCを積んだASR、そしてASRを沈潜直上に係留する4点係留装置等があります [1] 。 わが海上自衛隊はこれらを米海軍から学ぶとともに、ハッチのサイズ等インターフェイスを合せ、米海軍との相互運用を図っています。

FALCON <1919>は掃海艦として建造されたが1929年にASRに改造されMomsenが種々の実験に使用し、1939年には潜水艦SQUALUS沈没事故の救難にあたりSRCにより生存者全員(33名)の救出に成功した。
FLORICAN <1943>は2次大戦中ASRとして建造され、海自 ちはや <1961>の手本です。(船のカタチ-57
PIGEON <1973>は潜水艦THRESHER沈没事故に鑑み、潜水艦安全強化の一環として建造され、DSRV、DDS、SRCと、これまで開発されたすべての、多彩な潜水艦救難システムを装備、反面複雑なシステムとなりました。

LA JOLLA<1981>はLOS ANGELES級の潜水艦だがDSRVの母潜(MOSUB-Mother Submarine)として改造されました。 DSRVは母潜から発進し沈潜にメイティングして乗員救出し、つぎに母潜にメイティングして収容するのです。 もともとDSRVは潜水艦にメイティングするものとして開発されたのだから、この方法は理にかなっています。 「救出とは海面上に救出する」という旧来の考えから脱して、「海中でやろう」というもので、それまでの海面志向から脱し、真のSubmarine(海中艦)による海中オペレーションシステムになったといえます。

1992年にはPIGEONは退役し、米海軍の潜水艦救難はMOSUB方式になったが、現在ではさらに無人方式等が研究されているようです。 これらはまさに高度な海洋開発システムといえると思います。

   [1] 例えば P・マース著 江畑謙介訳、 海底からの生還、潜水艦救出作戦、 光文社2001


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