個艦優秀と言われた日本海軍の軍艦の「船のカタチ」を見てきましたが今回をもってひとまず最終といたします。
日本海軍は造船、造機、造兵等の科学技術を欧米から学び、発展し、そして米海軍と太平洋戦争をやり、敗れました。
上図は戦争中の日・米の軍艦について、艦種ごとに対比すべきと思われる艦を、並べて図示したものです。
戦艦IOWAと大和は似たカタチ、IOWAの方が高速。前述(船のカタチ-87)の、高速の艦がよい戦果、と符合。
空母ESSEXは、大鳳と極めてよく似たカタチと性能。しかし建造隻数と、飛行機の数は米海軍が圧倒的に多かった。
巡洋艦BALTIMOREは利根と同程度の艦だがB艦は背が高く乾舷大。 レーダー等はB艦が格段に優れていた。
駆逐艦陽炎は高性能艦。 それを見て米はより高速のFLECHER級を多数建造。 米のボイラ・タービン量産技術力は強。
潜水艦伊15はGATOよりも格段に高性能だったが用法不適により惨敗。 GATO級は通商破壊に使用され戦果大。
このように見てきて私の思うことは次の通りです。
① 日本の個艦優秀は戦争開始時のこと、末期では米艦も高性能、米艦は新造艦で、戦訓を盛込んだ強力艦であった。
② 艦の建造は、日本は開戦までに全力を尽くして優秀艦を建造したがそれで精一杯であったのに対し、米は開戦後、日本の軍艦を調査し、より高性能の艦を大量に建造した。 戦争をやりながら大量の艦の建造をやった造船力はスゴイと思う。
③ 船のカタチはどちらも良い。 日本艦は乾舷を必要最小とし背の低いカタチに対し、米艦は乾舷大。 乾舷大なることは復原性、強度、凌波性、どの面からも有利、また予備浮力が大で損傷時の残存性大、戦闘艦としてシブトイ、と私は思う。
④ 用法・合戦モデルはどちらも「艦隊決戦」でスタート。 日本はこれに終始したが、米海軍は戦訓を活かして航空機重視、レーダー、ソーナー等探知技術重視、潜水艦による通商破壊等自己改革し、結局米海軍は戦争に勝利した。
以上、日本海軍は日露戦争の成功体験にとらわれ硬直した戦争をやったのに対し、米海軍は戦争の体験により自己改革をした。 「強いものが生残るのではない、変化できるものが生残る」とはよく言われることだが、ここにも当てはまると思います。 自己改革できたのは、米国社会が民主的で反論も含め衆知を集め評価するのに適していたからか、と私は思います。
このシリーズ制作で私は多くの日本海軍資料の恩恵を受けました。 資料リストを 船のカタチ-86A に注記したが、それらの資料を見て、よくもこれだけ詳細・多数の資料が保存・公開されたものだと私は思いました。 それはさきの戦争で日本が敗れたからかもしれない、もし勝っておれば旧来の秘密主義等が再びのさばり、資料の公開はなされなかったであろうと、私は思います。 日本海軍資料の保存・公開に尽力された海軍造船技術者の方々に感謝の意を表したいと思います。
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