船のカタチ(100A)  海上自衛隊護衛艦 DD汎用護衛艦 - 1/2
               はるかぜ <1956>級、 あやなみ <1958>級、 むらさめ <1959>級
               あきづき <1960>級、 やまぐも <1966>級、 みねぐも<1968>級、 たかつき <1967>級

              
                                                2018-04 神田 修治



上図には海自最初の護衛艦はるかぜ級から、その後約10年のたかつき級までの各級を図示します。
これらは前記のAAW、ASW、ASUWの三戦様すべてを考えたDD汎用護衛艦であります。

はるかぜ <1956>級、USNのFLECHER (F級)SUMNER (S級)に学んで設計され(船のカタチ-99B、資料2)、船型は旧海軍の船首楼型を脱して平甲板型、船体構造は横式を脱して縦式構造とされました(資料1)。 このように本艦は旧海軍を基とし、これから脱して、USNに学びながら設計されたと言えます。 なおUSNに学ぶ、倣うことには、手本にする他、同盟としてUSNとミサイル等の兵器や情報ネットワーク等の共同作戦のため、制式・規格を統一、共通化する、という側面もまた重要なことと私は思います。

あやなみ <1958>級、新しいカタチ、はるかぜ級からも脱し、当時の海自独自のカタチとなりました。 長船首楼型となり、その後端は坂道でオランダ坂と呼ばれました。 主船体は大きく、上構は小型で軽快なカタチ。私たち船好き仲間はよいカタチだと感心しました。
むらさめ <1959>級、船型はあやなみと同様だが主砲が127mm、因みに主砲ははるかぜ級127mm径、あやなみ級76mm径連装。
あきづき <1960>級、本級はあやなみむらさめ両級の兵装を兼備し、さらに対潜ロケットを備えた強力艦、そして大型艦になりました。 OSP(OffShore Procurement)艦で、USNの予算により日本で設計建造され、完成した艦を海自に供与するという仕組みの艦です。
上の三級は、丸みのある艦橋、オランダ坂、小さい上構等、互によく似たカタチで、当時の海自独特の良いカタチと私は思います。

やまぐも <1966>級、バウソナー船型、マルチ・デイゼル主機、アスロック、ボフォースの導入等新しい試みの艦、カタチも大きく変わりました。
みねぐも <1968>級、本級はやまぐも級と同様だが、アスロックをやめ、無人ヘリコプターDASHを導入した。 煙突は1本、珍しい。
たかつき <1967>級、蒸気タービン主機に戻った。 やまぐもみねぐも両級の兵装を兼備え大型化。 マストとエントツ一体化のマックとした。

これらの艦の基本設計は、初期には旧海軍の技術者たちによる?船舶設計協会により行われたが、1958年頃以後は、(防)技術研究本部(技本、現・防衛装備庁)にて行われるようになりました (資料2) 。 それは 
やまぐも級以降の艦で、鋭い船首や角ばった艦橋等に、技本設計のカタチの特徴が表れていると私は思います。 またこれらの艦は、終戦後海軍工廠はなく、民間造船所が建造したが、各造船所は積極的に取組みました。 当時日本の造船界は市場好況、護衛艦は利益の少ない仕事と言われたこともあり、艦艇関係者は社内で肩身の狭い思いも致しましたが努力を続け、現在は各造船所で、艦艇は重要な仕事となり、日本の艦艇技術の維持と向上に寄与していると私は思います。 さらにその根本として終戦時、日本の軍艦技術を、将来のために残し伝えるという旧日本海軍の技術者たちの志と活動も、忘れてはならないと思います。(船のカタチ-86A) 日本海軍の技術者たちの志と活動は、軍艦だけではなく造船全般におよび、日本が世界第一の造船国となった礎であったと私は思います。

   (資料1) 筒井為雄、昭和28年度計画の防衛庁新造艦艇について、船舶1956-10
   (資料2) 日本造船学会、昭和造船史、第2巻 pp572~


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