上図の(A)は一次曲げ(母線が直線)で形成し、各層を階段状に積み前後方向に変化を持たせて流線形らしくしています。 エントツも(B)のように一次曲げの筒型ですが底部を斜めに切ってエントツを傾斜させています。 このようにしてV船は高速前進感 (船のカタチ-11a) のある流麗なカタチになりました。 さらに工夫して一次曲げではあるが円錐台形にしたものが(C) L船のエントツで、トルコ帽型とも言われています。 (D) L船ハウス前部は二次曲げ(左右にも上下にも曲がっている)としています。 L船も美しい造形だと思います。
現今の造船では、大きな骨部材は鋼板から切出したものを溶接組立して作り、鋼板の曲げには線状加熱等が多用されて球状船首等の複雑な二次曲げも自由自在に作られ、さらには「ブロック建造法」に変わっていることは周知のとおりです。 自由自在に工作できるからといって、最近の船のカタチがよくなっているか、には問題があると私は思います。 工作法や機能・性能からくる制約の中で、それらを生かしながらよいカタチを創りあげること、そして出来上がった船を見る人たちから好感・好評を得ることは大切だが、難しいことだと思います。
このことを、OSKで設計をやられた和辻春樹氏は「近代科学と船の性能を理解した船の新しい美」(1)といい、KHIで設計をやられたあとK-LINEに転じられた高橋菊夫氏は「独自の風格」(2)といわれています。
概念としては理解できるが、それでは具体的にどうすればよいか、私は釈然とせず、やはりこのことは難しい。 このことを考えるのが、この「船のカタチ」シリーズの狙いのひとつであります。
(1) 和辻春樹、 船と科学技術、 天然社 1942、pp75
(2) 高橋菊夫、 思い出の船を追って、 Kラインニュース 1966
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