2015年、明けましておめでとうございます。今回から数回にわたり、船首のカタチを見ます。
むかし汽船が出現した初期、1910-1920年代の船首の多くはF船のように直立船首でした。
その後、凌波性の良い傾斜船首となり、さらに抵抗の少ない球状船首(Bulbous Bow - BB)となりました。
その一例として省エネ船C船は、BBにより水抵抗を減らすとともにハウスの前面左右をナナメにカットして空気抵抗の低減を図ったカタチのKHI建造LPG船でした。
ところがKHIがLPG船の新船型として、BBと同様の横断面積特性を保ちながら横から見た船首を直立とすることによって船首部の流入角を鋭くして造波抵抗を少なくするSEA-Arrowという船首のカタチを開発しました。 これにより造波抵抗はほぼ半減し、就航実績も船速が平均約0.4kn向上したと報告されています(1)(2)。 この一例がG船です。 なおこのカタチの第1船は2003年竣工のCRYSTAL MARINEです。
KHIはその後このような船首のカタチを、LPG船だけでなくPanamax Bulk Carrierにも採用しました。
その一例はCL船です。ただし、このカタチの第1船は2005年竣工のMARITIME SETOSHIOです。
このカタチの船型設計思想はSEA-Arrowの船首部流入角を鋭くするという考えとは別のようです。
直立船首は昔の船のカタチだが、その後C船のBB船首等を経て、G船やCL船のように直立船首が新機軸としてリバイバルしたといえます。 新しいカタチが出現するたびに、私は奇異に感じるが性能はよいのだから、と納得していました。 しかし目が慣れると、これもナカナカよいカタチと思うようになるのは、なにか不思議です。
この「目が慣れる」ということは船のカタチを考えるうえで大切な要因で、検討すべき課題だと思います。
[1] 箙他、中速船の推進性能を高める新型船首形状SEA-Arrowの開発について、関西造協論文集241
[2] 上田他、中速船の推進性能を高める新型船首形状SEA-Arrowの就航実績、関西造協論文集243
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