船のカタチ(67)  超大型クルーズ客船
                 ROYAL PRINCESS <2013>級、 OASIS OF THE SEAS <2009>級
                                                                   2015-07 神田 修治


前回述べたようにPrincess社のクルーズ客船のカタチはDIAMOND PRINCESSによって定着した、と私は思ったが、その思いは裏切られて2013年には新しいROYAL PRINCESS級が出現しました。 それを上掲しますが、本船の出現はクルーズ客船事業界の巨大化・新型化の競争によるものと思います。 この船の狙いは大型化・マスプロ化であり、14万GT、3600人収容という超大型船です。 この船のカタチは、多数の乗客を収容するため主船体の上に陸上建築の巨大なマンションに似た上部構造を乗せたものといえると思います。 また煙突オブジェ(船のカタチ-65)も、船体のカタチによくなじんで、なかなか洗練されてきたと私は思います。

本船は、長さ360mという大型なので紙面の制限から45度斜めではなく30度斜めとしました。 またマンションに似た上部構造の有様を示すため、斜め前の他に斜め後から見たカタチも図示しました。

超大型クルーズ船といえば、現在世界一大きい船としてRoyal Caribbean Cruise (RCC)社のOASIS OF THE SEAS級があるのでこれも上に図示しました。 これは22万GT、6300人収容というシロモノです。 本船の図示は上記のように30度斜めでも収まらないので、側面図および断面図としました。 断面図でわかるように、客室は左右二棟に分けてその間に船首から船尾にほぼ全通するイベント・ストリートともいえるアーケードを設けています。 このようにしてすべての客室は、外舷の海を眺めるか、または船内イベント・ストリートの有様を眺めることができるという工夫です。 この工夫は本船の建造所Wartsila社によって1991年竣工のカーフェリー SILJA SERENADEにおいてはじめられたものです(1)。

RCC社は、これまで見てきたCarnival社と並ぶ世界の二大クルーズ船社のひとつですが1969年設立されたときはSkaugen社やGotaas Larsen社等のノルウエイの船社が資本参加しています。 Gotaas Larsen社については本シリーズでもノルウエイの海事を紹介したところで記しています。(船のカタチ-36

以上船のカタチ-64から4回にわたり、「P&OのPrincess」というセンスでクルーズ客船を見てきました。
海へ出て航海することは苦労もあるが楽しみも絶大であることをよく知った人々、例えばノルウエイ海事の人々によって創業されたクルーズ客船事業は、航海の楽しいところをすくい取るように集めて事業を展開して人々に受入れられ、いまや一大産業になったといえます。 それはそれでよいことと思うが、海事関係者として私は、楽しみだけでなく苦労もまた大切な海事の一側面であることを、人々は忘れてはならないと思います。

  (1) SILJA SERENADE, a revolution in Baltic Passenger Ferry, The Naval Architects, Feb. 1991


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