このシリーズでは以前にカーゴライナー定期貨物船について記述しました(船のカタチ-13~18)。
船のカタチ-13では、畿内丸級、能登丸級、神川丸級の3船のみを記したが、それは技術の進化を強調したかったためであり、他にも記すべきよい船があったのにそれらを割愛しました。 割愛したもののなかにも戦前日本の優秀な定期貨物船や、記すべき事柄があります。今回から数回、それを補足したいと思います。
今回は「優秀船舶建造助成施設」という政策によって新造された船たちの中から取上げます。
戦雲の動きにより日本は、1938年からこの政策により補助金を出して高速カーゴライナーを整備しました。
崎戸丸 <1939>級、145mL、9600PS、平甲板型、均整とれた良いカタチ、戦後のS級(船のカタチ-28)の手本。
東山丸 <1938>級、140mL、9600PS、OSK畿内丸級の大型化高性能化したもの、カタチも近代的でスマート。
淡路山丸 <1939>級、145mL、9600PS、ハウスが独特、後部は5層、前部4層、その分サロンの天井が高い。
金華丸 <1939>級、145mL、9000PS、船体は神川丸と同じ線図らしい。当時の有力船社・国際汽船の所有。
これらは、140~145mLの長い船体に9000PSを超える大馬力のデイゼルを積んだもので、高速でした。
9000PS超のデイゼル主機は当時技術的に難題でS船、T船では2基2軸とし、A船、K船では複動式(ダブルアクティング)としてこの難題に対処しています。 2基2軸は重量増・高価だったでしょうし、複動式デイゼル機関は構造複雑、乗員のメンテも大変だったと聞きます
(1)。 またこれらの船は政府からの助成があったからできたものと思われ、経済的見地からは問題もあったのではないかと私は思います。 太平洋戦争がはじまると、これらの船は軍に徴用され、すべて戦没しました。
(1) 岡田紀代蔵、カーゴライナーの運航と機関の苦楽-MTS122例会を聞いて、MATRIX86 2014年
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