船のカタチ(14a 13a)   投影図一部改正  (日本の定期貨物船 CARGO LINER)
                                                                2016-07-15 神田 修治

船のカタチ(14a)  戦後日本 CARGO LINER  ぱなま丸型、 ねばだ丸型、 山城丸型  (一部改正)

このシリーズの特徴として、左側の正横側面図と、右側の斜め前方から見た図の二つで「船のカタチ」を表わしています。 例えばデリックポストが門型か一本マストか、や、ハウス前面の窓の配置等は、側面図ではわからないが斜め前方から見た図でわかるからです。 また、この斜め前から見た船のカタチは、最もよいカタチだと思います。 現に船の絵や写真でもこの姿勢が多いようです。 船の設計にあたって、斜め前から見たカタチを意識して作業を進めることも多いのではないかと私は思います。 さらに、船乗りの知人から聞いたところでは、彼らの間ではハウス前面のことを「顔」と言い、「お前の船はよいカオをしちょる」等と言うことあるそうです。

では、斜め前からの図をどんなものにするか、このシリーズではいろいろ試してきました。
船のカタチ(13)では、正横から30度前方から見た、ひとまわり小さな絵を付属図として付けた。
船のカタチ(14)では、正横から45度前方から見た、ひとまわり小さな絵を付属図として付けた。
船のカタチ(15)では、正横から45度前方から見た、同じ大きさの絵を同格の図として付けた。
そして船のカタチ(15)が最もよいと思われたので以後は原則としてこの方式に統一しています。
ただし距離は無限遠、したがって遠近の効果は出てこない。

そこで今回、既発表の船のカタチ(14)についても-(15)と同様に左右ともに同じ大きさとし、左側は正横から見た像、右側はその位置で45度回頭した像としました。 それを船のカタチ(14a)として下図に示します。



具体的な作図法は、船のカタチ(14)の左側の絵を「切り取り」、70%に縮小して「貼り付け」するが、私の現有の画像ソフト「ペイント」でやると解像度が低下するので、コピー機での縮小や手作業の描画を加えてやりました。

これは、高さ方向は左右で同寸法となり、視線を左右に振りながら見て「ハハァ!ハウスの前面はこんなカタチか」等と理解することになります。 私たちがよくやる、一般配置図や構造図で視線を上下に振りながらデッキ間の関連を理解するのと同様で、読図の一つと言えます。 またLook Out(見張)から言うと、右側の図は、左側と同じ距離離れて45度回頭したものに相当します。 これはまた図示における一つの標準化といえ、このシリ-ズのように、複数の船やその図を並べて、その比較などを系統的に説明するのに効果的であると思います。



船のカタチ(13a)  1930年代日本 CARGO LINER  畿内丸型、 能登丸型、 神川丸型  (一部改正)

下図は船のカタチ(13) について、前ページの(14a)と同様に、右側は左側と同距離はなれて45°回頭した状態を示したものです。具体的な作図法は前ページ(14a)と同様だが、今回は斜め30°を改めて45°にするので、右側の絵を描きなおすこととし、手作業を主としてやりました。 



この図(13a)を以前の(13)と比べて見て、前の図(13)では、右側は左側の付属図であったのが、今回の図(13a)では、右の絵が大きく詳しくなったのと、右も左もそれぞれ同格に船のカタチを表現する絵となり、解りやすくなったと思います。 また作図する私としては、左右の関係を考えながら絵を描くということや、船の写真を見て得た情報を盛込む等、私の頭脳の働きと手の働きのバランスがよく、こちらの方が都合よいと感じました。

このような表現法にはコンピュータグラフィクスCGが知られています。 CGでは斜め上方から見た図や遠近法等自由自在でまことに便利なものと思います。 しかし本シリーズでは老年の私のコンピュータ・リテラシーと残された時間、その他を考えて、CGはやらず手作業を主としてやっています。 とはいえ私がいま使っている道具の発達もスゴいものがあり、最近のコンビニ店のコピー機やスキャナーの高性能と便利さには瞠目します。

ところで(13)では、畿内丸をはじめとする各船はニューヨーク航路に就航した、と簡単に述べたが、これには
ニューヨーク直航航路という当時の海運の新ビジネスモデル物語がありました。 畿内丸が出現するまでは、米国向けの貨物は、主要なものは生糸(絹)でありましたが、米国西岸(サンフランシスコ、ロスアンゼルス等)でいったん荷揚げし、大陸横断鉄道に積替えてニューヨーク等の東岸へ運送していたのですが、畿内丸等は西岸での荷揚げ積替えをやめ、本船は貨物を積んだままパナマ運河経由、直接ニューヨ-クへ行く航路をはじめたのであります。 これらの船の航海速力16ノット以上であったが、この速力ならば鉄道に積替える方式と競争(走)可能だったのです。 この方式は、貨物積替え不要、またそれに伴う荷傷みが無くなるというメリットに加え、この方式は途中で別会社の鉄道を使う必要がないので、航程全体を船社で管理できるというメリットもあったと思います。 以後この方式が盛んとなり、船も優秀船が開発・建造されたのでありました。(1)
それにしても上掲の各船、大変良いカタチとあらためて感心します。

   (1) 昭和造船史 第1巻 pp262 1.2.1.1(4) 高速貨物船の出現、原書房 1973


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