私は2014年夏、この「船のカタチ」シリーズの中からピックアップしてパワポを作り 「カーゴライナーの興亡」 と題して発表しました。(1) その時出席者から「米国戦標船リバティ船は戦後の世界で活躍したことはよく耳にするが、日本ではこれらの船を用いなかった、それはなぜだろうか」という意見が出されました。 私は 「日本は海運復興とともに造船復興も重要と考え、日本の計画造船を進めることとし米国戦標船は使わないという考えがあったのだと思う」 と答えたが、心中、米国の戦時標準船(戦標船)はカタチ良い船であったと思いました。
そこで今回は米国戦標船のことを考えます。 上図は米国の一般貨物船の戦標船です。
LIVERTY Typeは中性能の量産経済船だが2700隻という多数が建造され、物資輸送に大きく貢献した。
VICTORY Typeは高性能、戦争の行方も見えてきた米国においてVICTORYと名付けられたのでしょうか。
C3 Typeは戦争が始まる前に計画された船で、当時の世界のカーゴライナーに比し遜色のないものでした。
MARINER Typeは朝鮮動乱に当たって計画建造された超高性能の船で、敵(中・ソ)の潜水艦に追われても逃げ切ることができる船と言われました。 こんな船は商業ベースでは採算取れないだろうとも言われました。
これらの船のカタチは、簡素化・標準化の考えはあるが、そのためにカタチが悪いということは決してないと思います。 LIVERTY、VICTORY型は戦用のイカツイ感じはあるがそれなりに良いカタチだと思うし、C3型は平時の商船に劣らずスマートだし、MARINER型は一種の気品さえ感じます。 ハウス前面や煙突の流線形もシッカリ考えています。 人々に「ヨシやるぞ!」という気概を起こさせる、よいカタチであると私は思います。
これらの船は米国商務省の海事委員会(USMC-US Maritime Committee)により計画されました。 戦後は係船されたものもあったが、多くの船が世界の船社に提供され、戦後世界で活躍したことはよく知られています。 MARINER
Typeは商業ベースでも収益性があったという説もあり(2)、実際に米船社に売船され活躍し、カーゴライナーの技術開発に多大の刺激と実績データを与え、世界の高速カーゴライナー発展に寄与しました。
(1) 神田修治、船のカタチにみるカーゴライナーの興亡、MATRIX86、2014
(2) CH. Whitehurst, US Shipbuilding Industry, Naval Inst. Press, 1986
pp18, pp176
|
|