Pシリーズという戦時標準船(戦標船)があります。(1)
PとはPassengerの頭文字でUSMC(前述、後にMARAD-Maritime Administrationとなった)の管理のもとに設計・建造された客船をあらわします。
有名な客船 SS UNITED STATES(船のカタチ-12)もこの中の船であり、P6とされています。 今回はP2-SE2という兵員輸送船Troop
Shipを見ます。
上図最上段AP118はP2-SE2原型、Troop ShipのGen. W. P. RICHARDSONです (1) 。 戦標船だが性能優秀、船のカタチもエントツの卵型断面やハウス前面のカーブもあり手抜きはなく、船らしい良いカタチであると思います。 本船で戦地へ赴く将兵に「よし、行くぞ」という気概を起こす船であったと思います。 さきの戦争について想うとき、人びとの気概が大切とする思想は重要であり、米国にはこの思想があったと思います。 しかし当時の日本や日本軍について思うとき、残念ながらこの思想が不備であったと私は思います。(後述)
2段目PC船は戦後不要となって工事中断されていたP2-SE船体2隻をAPL社(American President Line)が取得し、太平洋航路客船として改造完成したものです。 戦争が終わって平和が到来したという、人びとの明るいムードを感じさせる、まことに良いカタチだと私は思います。 煙突も先細でソフト帽を連想させるよいカタチ、私は中高校生時代神戸港で本船や僚船
PRESIDENT WILSON(PW船)を見て、これぞAPL独特の船のカタチと感心したことを懐かしく思い出します。 PW船は1953年平成天皇が皇太子時代、英国エリザベス女王戴冠式に昭和天皇の名代として出席するに当たり横浜からサンフランシスコまで乗船されました。
3段目PR船はAP118の後身で、1961年改造されAPL客船になりました(2)。 本船もAPL独特の船のカタチだが、巨大なエントツや、低くて直線的なハウスのカタチは、1947年のPC船にくらべて15年の年数を経て、より近代的モダンなよいカタチといえます。 しかしわたくし的にはPC船のカタチの方が好きであります。
APLは上記 PRESIDENT CLEVELANDや前述(-80A)PRESIDENT MONROE等のようによいカタチの客船をはじめ多数の船を運航した米国の名門船社でありました。 またコンテナ船の分野でも優秀船
President Truman級やAPL China級を開発しました(船のカタチ-22)。 厳しい競争によりAPLはシンガポール船社NOL-Neptune Orient Lineに買収されました。 しかしAPLのブランド名は残り、NOLはいまAPLの名でコンテナ船を営業しています。・・・最近また新しい合併ばなしがあるようです。
(1) L.A. Sawyer et al From AMERICA to UNITED STATES、Part Four、 World
Ship Society 1979
(2) 西村慶明、栄光のオーシャンライナー、ワールド・ムック 2000
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