前回(船のカタチ-104)に続き、上図には1990年代以降最近の海自潜水艦の全級を示します。 これらの艦の進化には ①ステルス性と探知能力の向上と、②水中オペレーション能力の向上が挙げられますが、これらは「潜水艦vs潜水艦」において、相手潜水艦をより早く探知し、先手を打って優位な態勢をとるために重要です。
はるしお <1990>級、涙滴型潜水艦の最終級で、同型艦7隻が建造されました。
あさしおⅡ<2001改造>、はるしお級中の1艦で、水中オペレーション能力の高い潜水艦開発のために、船体を9m延長改造しここにAIP-Air Independent Propulsionとしてスターリング機関システムを搭載し試験が実施されました。
おやしおⅡ<1998>級、船体のカタチは涙滴型を脱し葉巻型となりました。 船体円筒部が長くなり艦内配置には有利となりました。 水中航走中の抵抗、水中運動性の観点からは涙滴型が理想的ですが、この程度の速力ではその差は大きくなく、他の要因も考えて葉巻型にしたとされています(1)。 また艦橋の横断面を台形としてソナー音波を斜めに反射し、主船体には吸音タイルを取付けてステルス性の向上を図っています。
そうりゅう <2009>級、竣工ベースで最新の級で、艦橋前部には整流フィレットを設けて水流騒音を低減し、ステルス性と探知能力向上を図っています。 また水中オペレーション能力向上のために、あさしおⅡで試験したスターリング機関によるAIP(空気不要システム)を実艦装備して水中航走能力を増大し、また艦尾の舵をX舵としました。
SS513 <2022予>級、現在計画中の新型。 AIPをやめ、そのかわりに主蓄電池を従来の鉛電池よりも高性能のリチウムイオン電池としたものです。 このリチウムイオン電池の方式はそうりゅう級のSS511、SS512から採用されるそうです(2)。 新方式電池が真価を発揮するためには発電・充電システムの性能向上が必要であり、デイゼル主機、主発電機、スノーケル装置等の原動機システムの総合的な性能向上が大切であると私は思います。
上図で艦首のカタチは、おやしおⅡでは上下ほぼ対称だが、そうりゅう級では対称でなく垂れ下がったカタチです。これについて私の推察は、艦橋の水流抗力は艦首UPのモーメントを生ずるが、これを相殺する艦首DOWNモーメントを発生するために艦首の垂れ下がり斜面を形成したのではないか、と想像します。 垂れ下がり斜面に当る水流は艦首部に下方向の力を発生し、これは艦首DOWNのモーメントを発生すると私は思うのです。
潜水艦の動力として原子力は、AIP、持続力、大馬力等の観点で圧倒的に強く、長い視点からは、低騒音の原子動力機関の開発をやるべきだが、福島原発事故の失敗は、「反対」の社会的意見が増える、と私は思います。 また将来の潜水艦への私の思いは、乗員(要員)の外海との出入り(Lock-in
Lock-out LILO) を日常的、実用的にやるとよい、それには潜水艦技術と潜水技術の総合と進歩が大切、と私は思います。
注(1) 海上自衛隊潜水艦の技術的特徴、幸島博美、世界の艦船767 2012
注(2) 海上自衛隊全艦艇史、世界の艦船869、2017
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