上掲は輸送艦と称しているが、実態は人員、車両、武器を島等の海岸へ揚陸する艦、揚陸艦というべきものです。
揚陸作戦では、敵軍を撃滅した後、海岸等を実効支配するために人員や武器を揚陸することが必要であります。 前述、船のカタチ-93にて説明したUSNのARG参照。 この作戦は極めて攻撃的であり、海自主張の専守防衛に反します。 いま海自で揚陸艦でなく輸送艦と称するのもこのためか、と私は思います。 海自は平時、輸送艦を基地間の輸送や災害時島民避難等に活用しました。 しかし1970年代に中国が尖閣諸島の領有権を主張しはじめ、わが国との間に領有権問題が発生し、島嶼防衛、奪還のための、攻撃的な揚陸艦の機能が期待されるようになりました。
LSTおおすみ <1961就役>級、LSM輸送艇3001号 <1957就役>級、LCU2001号 <1954>級、LCM1001号 <1954>級、いずれもUSNから供与された揚陸艦艇であり、これらは第2次大戦中、ノルマンディ作戦、南太平洋作戦等で活躍した艦艇でありました。 海自では当初揚陸艦、あと輸送艦と称して活用した。 広い甲板と船倉容積、ビーチング能力は輸送艦、揚陸艦として使い勝手良く、広く多用途に重用されたようです。 これらに関連して、船のカタチ-93、-95にも記述あり、参照ください。
LSTあつみ <1972>級、みうら <1975>級、供与艦おおすみ級を手本とし、海自で計画、あつみ級は輸送艦の性格が強く、みうら級はLCMを搭載する等、揚陸艦の性格が強い艦となっています。 現在これらの艦はすべて退役しました。
ゆら <1981>級、輸送艇1号 <1988>級、より小型の輸送艦として計画されたが、ゆら級はあつみ級の小型版、同系列に対し、輸送艇1号は簡素化、合理化された新設計でその狙いは達成されたものと私は思います。 現在すべて退役しました。
LSTおおすみ <1998>級、新形式の揚陸輸送艦、ビーチング中の艦艇は波浪等の負荷に対し、敵の攻撃に対して脆弱であり、その対策として空輸、エヤクッション艇による輸送やLHD等が開発されたことは前述したが(船のカタチ-93、-95)、本級はその成果を参考にしたと思います。 空母型の船体、V-107等の大型ヘリの発着・給油、LCAC、揚陸兵員、車両、貨物の収容・運用可能な揚陸艦といえます。 LCACエアクッション艇1号 <1998>級、USNで開発されたLCACをFMS調達で輸入されたもの。
私の思いは、海自は平素これらを、攻撃的な強襲揚陸ではなく輸送重視等の運用をすればよいと思います。 しかしいざというとき島嶼防衛等の事態発生時には強襲揚陸作戦の運用が必要と思います。 そのための訓練・準備を怠らぬことが大切と私は思います。 その時には、本稿の揚陸輸送艦艇だけでなく、空母型DDH(船のカタチ102)等の運用、さらには陸上自衛隊との共同も必要かと私は思います。
(資料) 新型輸送艦「おおすみ」を解剖する 世界の艦船 541 1998-08
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