船のカタチ(20)  日本の初期のコンテナ船
             箱根丸型、あめりか丸、ごうるでんげいとぶりっじ、ジャパンエース
     2011-08 神田 修治


1960年代後半には世界的にコンテナリゼーションの波が押し寄せました。
日本の海運・造船界はこれに積極的に取組み、中核6社協力によるアジア-カリフォルニア航路(PSW)が開設されました。 上掲はこれらのコンテナ船の中から図示したものです。 (上からH船、A船、G船、J船と表記)

各社はCargo Linerの技術蓄積をふまえ、これにコンテナ化という新技術を盛込み、それぞれ性能優秀でよいカタチの船を造りました。 コンテナ船は荷役時間の短縮を実現してPort Speedという隘路を著しく改善し、船の航海速力の向上が実効的となったので、各船とも22ノット超の高速船として設計・建造されました。

これらの船のカタチを見ると、大馬力のデイゼル主機の長い機関室(ER)と同長ではハウス容積が大き過ぎるようで、H船ではハウス2層目から上を前後方向に短くして、生じたスペースにコンテナを積むという工夫が見られます。 G船はハウスが5層です。 しかしその後甲板上コンテナ積段数が増えると前方見通しが悪くなったと思われ、船橋の上に小型の船橋を増設した姿を見た記憶があります。 また船首楼についても高城清氏(故人、KHI、KLのOB)は、G船は航行中船首が青波をかぶることがあり、J船のような高い船首楼にすればよかったと記しておられます(1)。 このようにハウスや船楼の上部構造は船体の重心位置に関係し、船幅とあいまって復原性、平水中速力、実海域速力等に関係します。 そして上部構造は船のカタチに大きく影響すると思います。
他方コンテナ船は荷役設備が無いので、船のカタチ-15-16-18、のような工夫やバラエティはなくなりました。

コンテナリゼーションは、それまで「Port to port」であった海運を「Door to door」の一貫輸送・総合物流に変革し、新しいビジネスモデルの開発となりました。 一方貨物船の世界で、各種のバルクキャリア、自動車船等へと専用船化が進む中、コンテナ船は「雑貨」を運ぶという意味でCargo Linerの直系の末裔といえます。 そういえば当時「コンテナ専用船」という言葉がありましたが今では廃れて「コンテナ船」になったのはご存知の通りです。


(1) 高城清, Weather damage and it's lessons-4, 船の科学1991-08


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