船のカタチ(98A)  USN-MSC 米海軍ミリタリー・シーリフト・コマンドの艦船 -1/2
              SS AMERICAN COMMANDER (A級)、 T-AK2016 PIONEER COMMANDER (P級)、
              SS PRESIDENT POLK <1965> (PR級)、 T-ACS 3 KEYSTONE STATE (K級)、
              MS SEASPEED ASIA (S級)、 T-AKR 9679 CAPE RAY (C級)
              
                                                2018-02 神田 修治



前回(船のカタチ-98)にはMSCの名称のみ記したが、ここで少しく解説します。
MSCは1970年に、それまでのMSTS(注1)が改名・発展したもので、その任務はUSN海軍のみならず、海兵隊、陸軍、空軍の海上輸送であり、米軍全軍の海運部門といえます。 また海運のOwner、OperatorのうちOwnerに相当するといえるでしょう。 そして、どのような貨物をどこからどこまで運輸するか、その港湾設備はどうか、は作戦により多様で未知のこともあるので、その艦船は自律性の高い高性能の多機能船であることを要します。 ただし武装はしていないようです。 またMSCでは軍人ばかりでなく民間人も活躍してようです。 MSCでは古手の船を改造して利用した艦船が多い。 古手は商用海運で事業環境の変遷により不用となった優秀な商船をうまく利用していると思います。 MSC艦船の代表例を上に図示して説明します。 図の上下2隻の1組で、上は改造前商船、下は改造後MSC船を示すので、対比して見ると面白い。 上は商船としてカラフルな彩色であるのに対し、下はグレイ一色です。 グレイ一色では船体の立体的なカタチがよりよく解ります。

AMERICAN COMMANDER (A級) 米名門船社USLの高速貨物船でありました(船のカタチ-80D)。 コンテナ船の出現により活躍の場を失い、係船されていたが、MSC保有となり、T-AK(貨物船)PIONEER COMMANDERとして運航されました。
PRESIDENT POLK <1965> (PR級) 米名門船社APLの高速貨物船(船のカタチ-18-80D)。 MSCはこれに巨大なクレーン(55t X 2、ブーム長約40m戦車も吊れる)を搭載する等の改造をして、高速クレーン船 (T-AC) KEYSTONE STATE (K級)としました。
SEASPEED ASIA (S級) 川崎がSeaspeed社向けに建造したRORO船のハシリ。 MSCは本船に軽構造の甲板増設等の改装をしてRORO貨物船(T-AKR) CAPE RAY (C級)としました。 この船は先般2014年、シリアに保有されていた化学兵器用毒物を積込み公海上で無毒化処理を行うという作戦に従事しました。 https://en.wikipedia.org/wiki/MV_Cape_Ray_(T-AKR-9679)

このようにMSCは世界中の船を調査し適当な船を見つけて取得し、大型化、RORO化、洋上ランプ荷役設備、巨大クレーン装備等を行い有効活用しています。 そして、商業海運の環境の変化によって存在価値の低下したこれらの船に活躍の場を与えたと言える、と私は思います。 MCS艦船の物語は、もうすこし続けます。(船のカタチ-98B

    (注1) MSTS-Military Sea Transportation Service
    (資料1) ミリタリー・シーリフト・コマンド、Sea Power 1988-06



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