船のカタチ(98B)  USN-MSC 米海軍ミリタリー・シーリフト・コマンドの艦船 -2/2
               MS ESTELLE MAERSK (E級)、 T-AK 3000 Cpl. L. G. HOUGE (H級)、
               SS SEALAND EXCHANGE (SL級)、 T-AKR 287 ALGOL (AL級)、 
               T-AKR 300 BOB HOPE (B級)、 T-AKR 310 WATSON (B級)
              
                                                2018-02 神田 修治



MSCのイノベーションはさらに継続・発展しましたが、ここには継続してその代表事例を述べます。
ESTELLE MAERSK (E級) Maersk社の高速多機能船で、LOLOとRORO多機能の船でしたが、多機能とは中途半端でもあり、当時のコンテナ船の世界で、荷役装置を港湾に依存して荷役装置なしの合理的なLOLOコンテナ船との競争に負けていました。 MSCはこのE級を取得し、大型化改造し、巨大クレーン1基とヘリポートを設けて多機能貨物船 (T-AK) HOUGE (H級)としました。
これはMaersk社がMSCへアプローチしたものと私は思います。 Maersk社はMSCに広く深く食込んでいるようです。(資料2)
SEALAND EXCHANGE (SL級) 本船はコンテナ船の一つの失敗作であると私は記しました(船のカタチ-22)。 それは、蒸気タービン120,000PS、33ノットの超高速船で船価や燃費が高く経済的にバランスしなかったのでありました。 MSCは不稼働中の本船を取得し、RORO化、巨大クレーン2基装備、最上甲板にヘリポートを設ける等の改造をし、RORO高速貨物船 (T-AKR) ALGOL (AL級)としました。 軍用であれば経費のかさむ超高速船でも有効かと私は推定します。 船のカタチはSL級の時から良くないと私は思う。
BOB HOPE (B級)WATSON (W級)はMSCの新造船です。 MSCのそれまでの経験と知見を投入して設計されたと私は思います。 パナマックス超巨大船。 B級はAvondale造船所、W級はNASSCO造船所と、米国の民間造船所へ発注され、主要目は両級同じだが、船のカタチは造船所により異なります。 両船とも機能本位の武骨だがナカナカよいカタチと私は思います。
B級W級の基本要目と船のカタチを見て、これらの計画の特徴は次のようだと私は思います。
 ①大型化、ただし米国船としてはパナマ運河通航可能という条件あり。
 ②高速化、ただし近年はCGやDDの戦闘艦も30ノット程度故(船のカタチ-96-97)、
AL級の33ノットのよう
   な高速は必要ではなく、24ノット程度としている。
 ③巨大クレーン装備、戦車等の重車両荷役用、 ④RORO化、 ⑤ヘリポート装備、等が特徴と思います。
B級W級を見るとモノハコビ魂を感じます。
こうして、MSCは高性能・高機能の艦船を多数隻擁する船主Ownerになったと言えます。

船のカタチ-86から軍艦ばかりで食傷状態でありましたが、ここ3図はひさしぶり以前の高速貨物船も描いて楽しかったです。
以前描いた図を出すのはコピペでもよかったがここでは描きなおしました。 同カタチを再現・改善して描くのも修練と思います。

    (資料1) ミリタリー・シーリフト・コマンド、Sea Power 1988-06
    (資料2) 渡辺、米事前配備船整備プラン、世界の艦船2000-03
    (資料3) SL-7の設計・建造・運航実績、船の科学1975-7



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